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水資源を巡る課題とダムの再開発

水資源を巡る課題とダムの再開発

水利用に関する課題

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わが国の年間の降水量は約6,500(億m3/年)ですが、そのうち約35%は蒸発散し、残りの約4,200(億m3/年)が利用可能な水の量です。実際に使われている水の量は840 (億m3/年)で、その約3分の2を占める550(億m3/年)が農業用水となっています。
※平成19年度版「日本の水資源」:国土交通省より
日本の食料自給率は40%未満であり、大量の水を使って作られる農産物を海外からの輸入に頼っています。この輸入量は仮想水(バーチャルウォーター)と呼ばれ、630 (億m3/年)にもおよぶ試算結果※もあります。
※沖大幹助教授 東京大学生産技術研究所
水資源(農業用水)の効率的な利用や開発は、食料の安全保障の観点からも緊急性の高い課題であり、水資源の効率的運用を目的としたダム(ため池も含む)の整備は、極めて重要であるものと考えます。
気候変動(地球温暖化)により、水田の蒸発散量が増大し、総水使用量の2/3を占める農業用水の不足問題は深刻化することが予測されます。

水資源の不足

2030年代の8月に潜在的な水不足が予想される水田地域

水資源の不足

防災に関する課題

  • 気候変動がダム施設の安全性に大きな影響を与えています。例えば、「気温の上昇」→「降雨強度の増加」→「洪水量増加」→「ダム,ため池の洪水吐(余水吐)の能力不足」というフローが成立するため、防災上の観点から、施設改修の必要性は高まっています。
    建設後の経過年数が増加する施設が増えており、老朽化などにより事故発生の潜在的なリスクが増大しています。
  • 昭和30年建設のダム 余水吐越流部の劣化状況(福島県)

    昭和30年建設のダム
    余水吐越流部の劣化状況(福島県)

今後の展望

近年の農業用ダムは、良好な基礎地盤を有するダムサイトが減少し、変形性、透水性等に対し特別な基礎処理が必要とされるものや、築堤材料に高度な技術的工夫が必要となるケースが増えつつあります。そのため建設コストは、飛躍的に増大する傾向を示しています。
築造から20年以上が経過した農業用ダム(「長期供用ダム」という)の機能維持管理技術や再開発技術は、社会資本整備にかかわる重要かつ高度な技術として注目されています。
弊社では、農業用ダムの調査・設計・施工、管理および耐震性に関する技術課題に対して、数多くの業務実績を蓄積する中でダム技術の高度化に努めています。

ダム(ため池)の再開発に関する弊社実績

フィルダム

フィルダムの再開発としては、(1)堤体の嵩上げ、貯水池の掘削による貯水容量の増大、(2)貯水池の運用変更による貯水容量の再配分、(3)洪水吐の規模拡大等による安全度の向上、(4)既設堤体及び貯水池の機能の回復あるいは改善等があります。

事例:堤体嵩上げの総合的コンサルティング(岩手県)

1954年より供用している山王海ダムの嵩上げに対し、「調査・計画」,「設計・施工計画」、「ダム管理」までを実施しました。
嵩上げ工法は、効率的に容量を増大できること(総貯水容量9,594千m3→38,400千m3)、新たな補償問題・環境面への影響が少ないこと等の利点を有する一方で、既設ダムの安全性の評価、既設ダムを供用しながら施工する場合の転流の方法等、解決すべき課題が多くありました。

  • 嵩上げ工法
  • 山王海ダム

コンクリートダム

近年、コンクリートダムにおいてもフィルダムと同様に再開発が行われる事例が増えてきています。堤体の嵩上げでは、(1)既設ダムの安全性評価、(2)新旧コンクリートの接合や基礎地盤の改良方法、(3)施工期間中の貯水池運用計画とダムの安定性等についての課題があります。

事例:老朽化ダム全面改修の総合的コンサルティング(滋賀県)

1951年より供用している野洲川ダムの全面改修に対し、「調査・計画」,「設計・施工計画」、「ダム管理」までを実施しています。
老朽化が進み、洪水時の放流能力が不足するため、全面改修を実施。洪水吐を撤去して放流能力の大きい新しい洪水吐を設置、堤体下流面を補修しています。

  • コンクリートダム
  • 老朽化したダムの改修工事
  • 堤高H=54.4m
  • 嵩上げ高1.7m
  • 重力式コンクリートダム

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