地震への予防対策
2008年の岩手・宮城内陸地震の大規模な地すべりの光景を見て、わたしたちは大きな衝撃を受けました。
わたしたちは、1995年兵庫県南部地震以降のたび重なる地震災害の経験を生かして、適切な地震予防対策により被害を最小限に抑え、構造物を長期にわたって安全かつ効率的に利用できるような耐震診断・対策工のシナリオを提案します。
過去の主な地震を見ると、マグニチュード7以上の巨大地震のうち、内陸直下型の地震は、発生確率の差こそあれ、全国どこでも発生する恐れがあります。
巨大地震による被害はきわめて甚大で、東海・東南海・南海地震が同時に発生すれば、被害額は最大80兆円に上るとも推定されています。しかし、適切な地震予防対策を行えば、対策費を含めても被害額を約1/10に抑えることが可能と言われています。
1900年以降の主な地震
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■ため池の崩壊
―1995 兵庫県南部地震―
兵庫県農地整備課撮影 -
■防災ダム上流斜面の崩落
―2008 岩手・宮城内陸地震―
新しい耐震設計の流れ
新しい耐震設計および耐震診断では、構造物の重要度に応じて確保する健全度を設定した上で、構造物自身のねばりを最大限に利用することを目指します。
構造物の耐震性能の設定 |
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設計地震動の作成 |
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構造物の応答値の算定 |
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安全性の照査 |
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対策工の提案 |
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動的応答解析における設計地震動の例
事例紹介
フィルダムの動的耐震照査解析
フィルダムの地震時の安全性は、2次元動的応答解析(等価線形化/複素応答解析)と円弧すべりを仮定したNewmark法等の塑性変形解析の組み合わせにより迅速に検討できます。
近代施工のフィルダムは一般に十分な耐力を持っていますが、歴史のある小規模ため池は、必ずしも十分な耐震性能をもっていないため、安全性を診断し、対策を検討する必要があります。
地震への予防対策
1.重力式コンクリートダムの動的応答解析
重力式コンクリートダムの安全性は、引張応力によるコンクリートのひび割れ進展挙動を評価できる動的応答解析により行います。 右のダムでは、正三角形に近い堤体形状により、大地震時にもひび割れに対して安全と評価しました。
本来のダムの3次元的形状を周辺岩盤も含めてモデル化し、動的計算することで、堤体内部および岩盤との境界面に生じる応力分布を傾向を推定することもできます。
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A.2次元動的ひび割れ新展解析
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B.ダム堤体と岩盤の全体系による3次元動的解析(線形)
2.パイプを新設する既設水路橋の動的応答解析
旧河道を横断する水路橋に新設するパイプの安全性を、動的応答解析により照査しました。 地盤が軟弱なため橋は大きく揺れますが、桁間に生じる相対変位を算出し、パイプの可とう継手の許容変位量を決めました。
3.地中パイプラインの静的/動的応答解析
地盤は地表面に近いほど大きく揺れるため、地中パイプラインのうち、特に鉛直構造物に着目する必要があります。鋼管の鉛直曲り部は、フレームモデルによる応答変位計算が適用できます。シールドトンネル立坑と管の接合部には、3次元FEM解析を適用し、管の変形を詳細に計算しました。同接合部には、緩衝材を設置して免震構造とし、効果を確認しました。
農業用水におけるアセットマネジメントを考慮した耐震診断・対策工の提案
総延長数十kmに及ぶ農業用水において、長期にわたって効率的にシステムを運営していくためには、地震リスク評価とそれにもとづく耐震対策の方法を早急に定めなくてはなりません。そのために、時間的、費用的に効率よく耐震診断を行う方法とシナリオ策定のご提案をいたします。